転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「好きなだけ、自由に見て回ってくれ」
ディルクさんは私と繋いだ手をゆっくりと離してから、背中を押した。
私は彼の許可を受け、できる限り時間をかけないように自分が満足できる画材を手に入れなければと躍起になる。
その後、気合を入れた私は、油絵の具を中心に見て回り始めた。
「性別不詳の怪しい同行者を連れてくるなんて、いったいどういう風の吹き回しだい?」
「諸事情だ」
「はいはい。これ以上詮索はしないし、事情を聞かれても知らないフリをしておくよ。あんたには、何年も世話になっているからね」
海の絵をよく描くから、紺色がほしい。
空や海を表現するためには、水色も。
海の仲間たちや雲は、白色……。
あれもこれもと、欲張りになった結果――両手で持ちきれないほど画材を手にした私は、籠を持ってくればよかったと後悔した。
「それ、全部買うのかい?」
「は、はい……。ここには、もう2度と来られないので……」
「何言ってんだい。うちは潰れたりしないよ」
「そ、そういうことではなく……」