転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 店主は私に羊皮紙と羽ペンを差し出すと、「ボケっとしていないで作業しろ」と凄んだ。
 その有無を言わせぬ圧を受けた私は、立ち止まってなどいられない。
 渋々手を動かし、一心不乱にメモを作り始めた。

「で、できました……!」

 あれもこれもほしいと欲張った結果、羊皮紙5枚にびっしりと商品名を書く羽目になった。
 羽ペンを返却すれば、店主は呆れたように肩を落とす。

「あんたは集中すると、こっちの声が一切聞こえなくなるんだね……」
「も、申し訳ございません……」
「いや、いいんだけど。怪しい格好をしている理由が、なんだかわかった気がするよ」

 どうやら女性は、何度か作業中に私へ声をかけていたようだ。
 いつまで経っても返事をしないので、ディルクさんと一緒にこのお店へ姿を見せたことに、いろいろ納得するものがあったらしい。
 店主は私が購入すると決めていた油絵の具を持ち運びがしやすいように籠の中へすべて押し込むと、こちらへ手渡してくれる。

「あ、の……。お会計……」
「代金はいらないよ。すでに、受け取ったからね」

 ディルクさんは私が羊皮紙に文字を描いている間、お会計を済ませてくれたようだ。
 アトリエに戻ったら、お金を返さないと……。

「またおいで」
「は、はい。ありがとう、ございました……!」

 店主に笑顔で送り出された私は、ディルクさんとともに店をあとにした。

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