転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
用事も済んだことだし、あとはユニコーンが待つアトリエへ戻るだけだ。
行きは見慣れぬ道を進むからか。
時間の流れがゆっくりになった感じがするけれど、帰りはあっと言う間に過ぎていく。
「少しだけ、待ってもらってもいいですか」
この町並みを自分の目で見るのは、最後かもしれない。
そう考えたら感慨深くなってしまい、思う存分目に焼きつけたあとにこの場を立ち去ろうと思い直す。
彼は訝しげな視線をこちらに向けながらも、しっかりと立ち止まってくれた。
――またいつか、ここに来られますように。
そう心の中で祈りを込めた私は、いつも通りの毎日を続ける人々に背を向ける。
そして、誰にも邪魔されることのない穏やかな日常へ戻ろうとした。
「ありがとう、ございました。すみません。我儘を、言ってしまって」
申し訳ない気持ちでいっぱいになって謝罪をした私に、ディルクさんは「気にしていない」と言うように首を振る。
彼の優しさに何度も助けられている自分が不甲斐ないと思いつつも信頼感を高めていると、事件はなんの前触れもなく起きた。