転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「さぁ! 結婚しましょ! シエルが戻ってくるよりも、早く!」

 彼女が自信満々に言い放つ言葉の意味に気づいた私は、ディルクさんが黙って愚痴を聞いてくれた理由に合点がいく。

「俺の妻になるべき存在は、聖女シエル・べサリオただ1人。代わりなど、必要ない」

 ――彼はきっと、最初から知っていたのだ。
 私が神殿に命じられた、自身の結婚相手だと。
 そして、自分が王弟であることも、隠していた。
 それは、王族だと知られたらすぐに許婚だとバレてしまうからにほかならず……。

 そんな状態で、私に愛を囁いたの?
 もしもあの時身分を明かしてくれたら、拒否なんてしなかった。

 ディルクさんが醜い感情すらも黙って受け入れてくれる優しい人だと称していたのが、馬鹿みたいだ。
 見る目がないと言われているようで、心がズキズキと痛む。

「あたし、シエルよりも凄い聖女になったんだよ! ディルクのことも大好きだし、結婚しないなんてあり得ないよ!」

 そんな私が現在進行系で受けている苦痛に気づきもせず、妹は当然のようにディルクさんへ抱きつく。
 そして勝ち誇った笑みを浮かべて、彼の逞しい胸元に頬を寄せた。
 姿形は違えどその性悪さが滲み出ている表情は、私の知っている前世の妹そのもので――そんなはずはないと認めたくなかった気持ちすらも否定されてしまう。
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