転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「やめろ」

 こんな状態でディルクさんがノエルに好意的な仕草を見せるのであれば、私は今度こそ耐えられない。
 お願いだから、あの子を突き放して――。

 そんな祈りが、通じたのだろうか?

 彼は強い口調で妹を引っ剥がすと、距離を取る。
 しかし、自身の容姿に絶対の自信を持っているノエルはディルクさんから拒絶されても、なんのダメージも受けていないようだ。
 皮の面が厚い彼女は頬を膨れさせて苛立ちを露わにしながら、高らかに声を発した。

「うんも~! なんで? こんなにかわいい女の子が、結婚しようって言ってるんだよ!? 受け入れるのが、男として当然のことでしょ!?」
「君の常識は、俺にとっての非常識だ」

 ノエルは不貞腐れたように頬を剥れさせながら、何度も彼に抱きついては引き剥がされるのを繰り返す。
 2人がいたちごっこを続ける中、私は音を立てないようにゆっくりと後ずさりを始めた。
 ディルクさんは私の名前を、彼女の前で呼んでいない。
 そのおかげで、姉妹だと認識しているのが自分だけなのは幸いだった。

 早くここから、逃げなくちゃ。
 私があの子の姉だと、知られる前に――。
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