転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 逸る気持ちを抑えながら一歩、また一歩と距離を取れば、何度目かわからぬ攻防を繰り広げていた2人の視線が、不自然に私へ向けられた。

「ところで……。この怪しい人、だぁれ?」
「……っ!」

 妹に問われ、思わず息を呑む。
 唇を噛み締めていないと、悲鳴を上げてしまいそうだった。
 彼女にすべてを奪われる恐怖でいっぱいになった私は、勢いよく踵を返して走り出す。

「シ――」
「ねぇ、ディルク。教えてよー!」

 後方では私の名を呼ぼうとして邪魔をしてきたノエルに怒鳴りつける彼の声や、あの子と言い争うやり取りが聞こえた。

「離せ……!」
「きゃあ!? こんなにかわいい淑女を突き飛ばすなんて、あり得ないんだけど!?」

 しかし、1分1秒もこの場に居たくない私は、その内容に構っている暇はなかった。

 ――逃げなくちゃ。
 安全なところへ。

 ――帰らなきゃ。
 大好きなあの場所へ。

 私が佐部志江留だと知られたら、神殿に捕らえられるよりも酷い人生を歩むのは明らかなのだから……。
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