転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 ――どうして今さら、私の前に姿を見せたの?
 やっと掴んだ幸せを奪い取りに来るなんて、酷いよ。
 鬼。悪魔。
 もう二度と関わりたくないって、縁が切れたと思ったのに。

 なんの因果か、再び姉妹に生まれて――私から、心を許したディルクさんを奪い取ろうと目論むのだろう?

 ――ユニコーンと一緒に神殿から逃げ出す必要など、なかった。
 あのまま命を落とせば、妹が転生してきたことを知らずに済んだ。
 こんなに苦しい思いをしなくて、よかったのに。

 ――私はいつまで苦しめば、幸せになれるの……?

 大粒の涙を流しながら森の中を走り続ければ、すっかり住み慣れた別荘が見えてきた。
 私は施錠されていなかったアトリエの裏口を勢いよく開け放つと、中へ滑り込む。
 そして鍵をかけ、ドアを背にして崩れ落ちた。

「うわあぁああん……!」

 ――もう、耐えられなかった。

 泣き叫ばなければ、心が壊れてしまう。
 近所迷惑も顧みずに大声を上げて涙を流していると、異変を悟ったあの子がリビングに繋がる扉を破壊する勢いで開け放って姿を見せた。

「ユニコッ!?」

 ユニコーンは大泣きする私を目にして、おろおろと視線をさまよわせたあとに膝へ頭を乗せる。
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