転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 今は一刻も早く、シエルの顔が見たかった。
 あたりを見渡して彼女の姿を探すが、どこにも見当たらない。

「シエルは、アトリエか」
「お嬢ちゃんに、何したんだよ……」

 カルトンは彼女の居場所を語らぬまま、呆れたように肩を竦める。
 俺は彼を無視して、そちらのほうへ歩みを進める。

「止めとけ。ユニコーンの角に刺されるぞ」

 一般人であれば一溜りもないだろうが、神獣は俺に懐いている。
 問題ないと首を振れば、腕を捕まれる。

「手を離せ」
「これを見て、まだそんなことが言えんのか?」

 カルトンの利き腕には、ユニコーンの歯型や爪痕らしき真新しい引っかき傷が山程つけられていた。

「ごらんの有様だよ。リルマすらも、お嬢ちゃんに会わせてもらえてねぇ。あいつに嫌われた殿下じゃ、絶対に無理だ」

 やってみなければわからないと、強引に腕を跳ね除けるのは簡単だ。
 だが、ここまで彼が強く止めてくる辺り、なんらかの理由があると考えるべきだろう。

「俺はシエルに、嫌われてなどいない」
「自覚無しかよ……」

 俺は渋々状況を把握するため、カルトンに疑問を投げかけた。
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