転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
 たとえどれほど苦しむことになろうが、彼女から拒絶されようが、伸ばした手を掴む前に諦めるなど、あってはならない。

 ――屈して、溜まるものか。

 俺がシエルに向ける愛は、この程度の妨害で失うほど、意思が弱いものではない……!

「ユニコ! ユニィ! ユーニィ!」

 己を奮い立たせ両足に力を込めれば、ユニコーンが頑張れと応援するかのように俺の背中を押してくれた。
 ドシンと強い衝撃を受ければ、先程まで鉛のように重かった身体がやっと言うことを聞く。

「シエル……!」
「ユニィ! ユニ……!」

 俺は絵を見ないように極力下を向きながら、一角獣とともに床に倒れ伏す彼女の元へ向かった。

「しっかりしろ!」

 シエルの身体は冷たく、呼びかけても反応がない。
 俺はすぐさま彼女を寝室へ運び込み、布団をかける。

「シエル……!」

 医者を呼ぶとか、何かを食べさせてやるとか。
 彼女のために俺ができることを思い浮かべる気力すらなかった。

「俺の想いへ応える前に、いなくならないでくれ……」

 このままシエルが二度と目覚めなかったら?

 そんな不安で頭がいっぱいになった俺は、彼女の右手を握り締め――。
 ただ、祈りを捧げることしかできなかった。
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