転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
5【後編】・裏切られた聖女と嘘つき王弟
 一心不乱に絵を書き続けて、どれほどの時間が経ったのだろう?
 私はいつの間にか、寝室のベッドで眠ってしまったらしい。
 パチリと瞳を開ければ、見慣れた天井が視界いっぱいに飛び込んでくる。

「シエル……!」

 聞こえるはずのない声を耳にした直後、身体が硬直した。
 妹と結婚する予定だった人。
 私よりも、あの子を選ぶはずの人。

 好きになってはいけない男性が、私の手を握りしめながら名前を呼んでいると知ったからだ。

 ――二度と会いたくないと思っていた。
 いつかあの子に奪われるなら、交流など深めるべきではない。
 関わらなければ、大切なものを作らなければ、私は妹から、何かを奪われなくて済む。

 早く、逃げなくちゃ。
 でも、どうやって?

 寝起きの頭は、うまく回らない。
 私たちは無言のまま、長い時間気まずい時間を過ごす羽目になった。

「すまなかった」

 いつまで私のそばに、いるつもりなの?
 早く、どこかにいなくなってしまえばいいのに。
 はっきり言わなきゃ、伝わらないのかな。
 私がやきもきとしていれば、ディルクさんは深々と頭を下げた。
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