転生聖女は、ユニコーンと逃げ出した
「自己紹介の際、君の夫になる予定だと……はっきり宣言しておくべきだった」

 ディルクさんが私に隠し事をしていた事実は、変えられない。
 今さら謝罪を受けたところで、嘘をつかれたことに関して水に流そうと言う気持ちには、残念ながらなれなかった。

「俺は君たち姉妹の間に、何があったかを知らない。わかるのは、シエルが異常なまでに妹に恐怖をいだいていることくらいだ」
「私のことは、もう……。放っておいて……」
「それは無理だ」

 どうして彼は、私の言うことを聞き入れてくれないのだろう。
 姉妹仲が悪くてあの子に怯えているとわかったのなら、そっとしておいてくれたらいいのに。

 ――そうやって怒鳴りつけて暴れたくても大声を発する気力すらも起きず、身体がだるくて仕方がない。
 そんな状態の私が力なく項垂れたのをいいことに、彼は有無を言わせぬ強い口調ではっきりと宣言した。

「ようやく、君に触れられるようになったんだ。手放すわけが、ないだろう?」
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