温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~
「そう。だから今年は、すずと一緒に選んでみようかなって思ってさ」

 どこか楽しそうにいう一鷹さんだけど、私は思わず足を止めてしまった。
 だって、あまりにもハードルが高すぎて。

 賢木屋の生け花は全て、女将が手入れしている。華道の師範免許だって持ってるような人よ。
 花束を作るのは花屋さんだけど、でも……

「そ、そんな大役、私で勤まりますか?」
「大役? すずは面白いことをいうな。すずが選んだら、きっと母さんも喜ぶよ」
「……そうでしようか」

 一鷹さんに手を引かれ、再び歩き出した。
 そうして話しながら、じゃりじゃりと雪道を進んで行くと、温泉街唯一の花屋へとすぐにたどり着いた。

 温泉街でも、この時期はクリスマスリースやポインセチアが並んでいるのね。

「12月の誕生花は赤バラですよね」
「いつだったか、それを贈ったら『恋人に贈りなさい』って説教されたな」
「さすがは女将。手厳しい」
< 43 / 64 >

この作品をシェア

pagetop