温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました～世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた～

「私……勘違いしちゃうとこでした。ごめんなさい。仕事に戻りますね！」

　無理に笑おうとしても、涙が溢れる。
　こんな顔で、こんな感情でお客様の前に出られるわけがない。だけど、今、一鷹さんと二人で向き合い続けるのも限界だった。

　事務室を出ようとした私の手を、温かい手が掴んだ。あの日、結び橋の上で私を引き留めたように、しっかりと。

「待ってくれ、すず。違うんだ」
「……違うって……だって、私に妹さんを重ねたんでしょ？　助けてくれたのも、優しくしてくれたのも、私は妹さんの代わりで」

　いいながら苦しくなり、気づけば化粧が崩れるのも忘れて涙を流し、しゃくりあげていた。
　一鷹さんの両腕が私を包み込んだ。

「橋の上で初めて会ったときはそうだった」

　辛そうな声に、胸の奥がズキズキと痛む。

「だけど今は違う。辛いことがあったのを乗り越えようと、懸命に働くすずを目で追っていたら……好きになっていた」

　私に都合がよすぎる告白を、どうして信じられるだろうか。信じてまた裏切られたら、どうするの。

「……そんなの嘘です」
「嘘なものか！」