温泉街を繋ぐ橋の上で涙を流していたら老舗旅館の若旦那に溺愛されました~世を儚むわけあり女と勘違いされた3分間が私の運命を変えた~
「わかります。パンフレットって記念にもなりますよね。スタンプラリーとかあると、つい押したくなったりして」
「そうなのよ! 若い人でもそう思うのね。なんだか嬉しいわ。ありがとう」
無邪気に笑った女性は、旦那さんに声をかけてよかったわねといいながらパンフレットを開いた。
「観光タクシーもありますので、ご入り用の場合はフロントにお申し付けください」
「あら、そんなのもあるのね」
「地酒の酒蔵まで向かうルートが人気なんですよ」
「そうなのね。それも楽しそうね」
観光タクシーと酒蔵のパンフレットを渡すと、無口な旦那さんも興味深そうに目を向けた。
「ふふふっ、いい旅館に泊まったわね。フロントのお嬢さんは親切だし、お風呂も楽しみだわ」
「ありがとうございます。どうぞ賢木屋自慢の温泉を、ゆっくりとお楽しみください」
静かに頭を下げると、ご夫婦はお礼をいいながら立ち去った。
あんな風に、夫婦で温泉旅行を楽しめるって幸せよね。
少し羨ましく思いながらフロントに戻ると、また別の旅行客に声をかけられた。