白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
俺は右手をピアノから降ろした。

「じゃあ俺は、仕事があるから。」

ベッドサイドから立ち上がった俺を美玖は、何も言わずに見送る。

きっとそれでいいんだ。

美玖の病室から戻った俺に、黒川先生が近づいてくる。

「同意書、取れたか。」

「あっ……」

手元には美玖の名前のない同意書がある。

「なにやってんだ、君は。」

「すみません。」

「同意書の取り方、忘れたか。」

「……いえ。」

そして黒川先生は、新しい同意書を差し出した。

「三島遥さん。手術になった。」

「えっ……」

病状も回復していたのに、また手術?

「同意書、取って来られるな。」

「はい。」

病名を見ると、【動静脈奇形】また再発したのか。

脳の血管が異常に絡み合う疾患で、出血リスクが高い。
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