白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
かわいい?男に向かってかわいい?

ここは怒るところなのに、なぜか照れてしまう。

やっぱり美玖は、小悪魔だ。

「もう行くよ。」

「ええ?もっといて。」

「そうしたいけど、もう面会時間は終わりだ。」

時間は残酷だ。

二人の甘い時間でさえ、平気で奪っていく。

「明日も来るから。」

「待ってるね。」

うんと頷くと、美玖の病室を飛び出した。

廊下に目をやると、病死の入り口に里奈さんが立っていた。

「里奈さん。」

「ごめん。邪魔しちゃ悪いと思って、声掛けなかった。」

俺は里奈さんの前に立った。

「何か用件?」

「用件がないと、会いに来ちゃダメ?」

俺はううんと、首を横に振った。

「二人は、付き合っているの?」

付き合っている?そんなことは、あるのだろうか。
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