白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「お願いします。」

俺は一礼をすると、モニターに映る脳血管の3D画像を見つめた。

いつ見ても、人間の脳はシンプルなのに難解すぎる。

そして時計は、9時半を差していた。

オペの為に、手を洗う。

俺はこの時間が、正直に言って好きだ。

集中力を養えるから。

隣で里奈先生も、手を洗う。

「あーあ。今日合コンあったのにな。」

俺はクスっと笑った。

「行けばいいじゃないですか。何もなければ、夜には終わりますよ。」

「何もなければでしょ。それに10時間のオペをして、合コンに行く体力ないわ。」

もちろん、里奈さんの気ままな発言を叱る気持ちはない。

少し緊張している俺の心をほぐす為だって、知っているから。

「そろそろ、麻酔効いたかな。」

里奈さんと一緒に、滅菌ガウンを羽織る。

そしてキャップと、滅菌手袋を手に着けた。
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