白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
看護師さんが病室を出ると、辺りはシーンとなった。

残ったのは空しさ。

所詮私は患者で、悠真先生は私の担当医である事に変わりはない。

それ以上望んだたら、彼は応えてくれるのだろうか。

でも思い出すので、悠真先生と見つめ合った人。

抱き寄せられたあの温もり。

そして、吐息が混ざり合う口づけ。

なのに、全てが虚無だと思うのは、私の中に悠真先生を信じる力が足りないから?

その時だった。

廊下の方から、女性がキャーキャー騒ぐ声が聞こえた。

なに?誰か有名人でも来たの?

私は体調がよかったのも手伝って、ベッドの中から抜け出した。

病室のドアを開けて、廊下を覗くとそこには女性の患者に囲まれている、男性の姿があった。

「なんだ。やっぱり有名人?」
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