白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
チケットの名前を見た瞬間、目が丸くなった。

ピアニスト:朝倉 玲

「……ええ!? 朝倉くんが?」

悠真が首を傾げる。

「知り合い?」

「知り合いも何も、音大時代の同級生。同じピアニスト志望だから、いつも同じ教室なの。」

すると悠真先生が、ちょっとムスッとしている。

「どうしたの?」

「いや……音大生だった時の美玖、見てみたかった。」

その嫉妬にも似た表情に、私は心が満たされた。

「きっと、ピアノしか見てなくて、つまらない女だったと思いますよ。」

「それでも俺は、君を好きになっていたかも。」

病室に優しい空気が流れる。

なんだか首筋がくすぐったくて、まるで春風に包まれているようだった。

「一人で行くの?」

「いや、篠田先生が一緒に来てくれる。」

「篠田先生が?」
< 125 / 298 >

この作品をシェア

pagetop