白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
その時だった。

病室のドアが開いて、篠田先生が入って来た。

ネイビーのシャツをボタンを二つ外して、ベージュのチノパンで来た篠田先生は、小洒落た感が満載だった。

さすがは医師二人。

お金持ち感が否めない。

「いた。まさか本当に天音さんの病室にいるなんて、思ってなかった。」

「でもいたでしょ。」

この二人が、コンサート会場に行ったら、どうなるのだろう。

周囲の女性に、取り囲まれやしないだろうか。

「渡部先生、そろそろ時間ですよ。」

「もう?」

悠真先生は、名残惜しそうに私を見た。

「今度、コンサートの感想聞かせて。」

「ああ。必ず話すよ。」

そう言うと悠真先生は、小さく手を振って病室を離れて行った。

「あーあ。」

私は枕に体を預けると、途端に朝倉君が羨ましくなった。
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