白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
患者さん同士で話している人や、家族同士での団欒。

看護学生だろうか、勉強に来ている人もいた。

そして私は見つけてしまった。

コミュニティスペースの端に、電子ピアノがあることを。

私は近くにいる看護師さんに、声を掛けた。

「すみません。あのピアノ弾けますか。」

「ええ。どなたでも弾けますよ。」

私はゆっくりとピアノに近づくと、蓋を開けた。

久しぶりに見る生のピアノ。

白い鍵盤を叩くと、ポンと音がした。

ピアノの前の椅子に座る。

そして私は、鍵盤に両手を置くと静かに弾き出した。

ドビュッシー《月の光》

月の光が水面をなぞるように、音がゆっくりと零れていく。

ひとつひとつの音が、まるで呼吸のように静かであたたかい。

鍵盤を押すたびに、彼女の心が少しずつ癒えていく。

それは旋律ではなく――祈り。
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