白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「右頭葉は、左手の運動機能に微妙に影響するんです。」

私は息が止まった。

「脳腫瘍……私、治るんですか。」

「前頭葉の腫瘍はできやすいですが、オペで取りきれる。俺に任せて下さい。」

渡部先生は、私に手術の同意書を見せた。

「命の危険が迫っています。なるべく早くに手術を受ける事をお勧めします。」

私は同意書を手に取った。

手術名(例:右前頭葉腫瘍摘出術)

文字を見ると震える。

「死ぬことはないんですよね。」

「手術ですから、命の危険もあります。ですが、ここのオペチームは優秀ですよ。」

私は息をゴクンと飲んだ。

「私、生きたいんです。」

「ええ。分かっています。あなただけじゃない。患者さんは皆、生きる為に手術を受けます。」

私は、渡部先生を見つめた。

「私の命を救ってくれますか?」

「救います。全力を尽くします。」

そして私は、その下の文字を見つけてしまった。
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