白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私の涙が頬を伝った。

悔しかった。

コンサート会場で、悠真先生の拍手を受けるのは、この私だったかもしれないのに。

私は立ち上がると、ピアノの蓋を閉めた。

その瞬間だった。

目の前の視界が、ぐるぐると回り出した。

「うぇ……」

気持ち悪くなって、その場に両膝をついた。

「うぅ……げぇ……」

吐きそうになって涙が出る。

「大丈夫ですか!ちょっと看護師さん!」

誰かが看護師さんを呼びに行った。

「どうしました?」

でもあまりにも強い吐き気に、何も答えられない。

「はぁはぁ……」

たまりかねて、床に転がる。

「誰か!ストレッチャーを!あと黒川先生を呼んできて!」

看護師さんが吐き気のある私を、横向きにする。

「今、先生来ますからね!」

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