白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私には聴かせられない、あの音を。

悠真先生に聴かせてあげたい。

その時だった。

「あああああ。」

私の体が震える。

「美玖ちゃん!」

「ううううう。」

私は黒川先生を見た。怖い。どうして全身が震えてるの?

「全身けいれんだ。ジアゼパム静注。」

「はい!」

「美玖さん、俺の声聞こえる?」

「ああああああ……」

黒川先生の腕を掴む。お願い、悠真先生だけは呼ばないで!

「すまない!渡部にオンコールだ!」

涙が出た。私が悠真先生の時間を奪う。

「だああああ、めええええ。」

必死にオンコールを拒否する。

「命が優先だ!美玖ちゃん!」

お願い、悠真先生。コンサート中に気づかないで。

たぶん、電源を切っているはず。

そうであって欲しい。

「黒川先生!渡部先生のスマホ、繋がりません!」
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