白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「悠真先生……」

ハッとした先生は、立ち上がると私の顔を覗き込んだ。

「美玖……よかった。目が覚めて。」

先生の目が赤く腫れていた。

「泣いてたの?先生。」

「泣いてなんかいない。」

そう言った先生の目には、涙が溜まっていた。

「ごめんね。コンサート中だったのに。」

ううんと悠真先生は、首を横に振った。

「最後の曲まで聴けた?」

「聴けた。そのせいで、美玖を苦しめた。」

私は先生の手を握りしめた。

「そんなことないよ。最後まで聴けてよかった。」

先生の手が震えている。

「君は……命の危険にさらされたって言うのに。」

片手で抱き寄せてくれたのは、もしかして私を守りたかったから?

「朝倉君は、ドビュッシーの月の光を弾いた?」

「月の光?」
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