白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「仕方ないわ。水をやる暇もなかったんだもの。」

そう言うと悠真先生は立ち上がって、洗面台に向かうとお花に水をあげた。

「ほら、これで花も生き返るよ。」

そして私の枕元の棚に、また飾ってくれた。

「私、今度は水色のお花がいいな。」

「今度買ってくるよ。」

「本当?嬉しい。」

その約束が、心をくすぐって仕方がなかった。

「コンサート、どうだった?」

悠真先生は、ベッドの上に肘をつくと私の手を握った。

「よかったよ。美玖が生きている世界を知れて。」

「朝倉君は、ピアノ上手かったでしょ?」

「さあ。俺には何が上手くて下手なのかは、分からないから。」

ただそんな他愛のない話をするだけでよかった。

先生の言葉が、声が。

私を包み込んでくれれば、私は満たされていくのだから。
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