白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
黒川先生は俺の顔を見つめる。

「だが時に、冷静に考えては乗り越えられない状況もある。その時に必要なのは、患者を救いたいという情熱だ。」

里奈さんは、呆れた顔をする。

「黒川先生までそんな事を?」

「あれ?俺今、いいこと言ったと思うけれど?」

黒川先生がそう言うと、里奈さんはどこかへ行ってしまった。

「すみません。俺が悪いんです。」

そう言うと黒川先生は、俺の肩を叩いた。

「いいんだ。鷲尾先生も、本当は知ってるんだよ。」

俺はニコッと笑ってうんと頷いた。

「渡部。」

「はい。」

黒川先生が真剣な目で俺を見る。

「この時の為に、シミュレーションを繰り返してきたこと、忘れるな。」

「はい。」

「おまえにならできる。そして美玖ちゃんを救えるのは、自分自身だけだと自分を信じるんだ。」

俺は大きく頷いた。
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