白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「いよいよね。」

里奈先生と目を合わせると、二人でオペ室3・通称ダヴィンチルームに入った。

ガラス越しに黒川先生が、話しかけてくる。

「三島さんのオペの時と同じチームだ。落ち着いていけ。」

「はい。」

そして美玖の近くに行った。

モニターの電子音が、一定のリズムで鳴り続けている。

白い照明の下、麻酔科医が声をかける。

「深呼吸してね、美玖さん。吸って、吐いて……そう、ゆっくり。」

マスクが口元を覆う。

甘いガスの匂い。

美玖が薄れて行く意識の中で、ただ一人俺を見つめていた。

俺はフェイスシールド越しに、目だけで「大丈夫」と伝えた。

「……先生。」

声にならない声を、美玖は唇で形にした。

「俺がいる。」

その一言が、美玖の意識の最後に届いた。
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