白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
その時だった。警告音が鳴り響いた瞬間、心臓が跳ねた。

モニターの波形が乱れ、真紅の警告が視界を覆う。

「出血点確認!」

「吸引します!」

里奈さんの声が鋭く響く。

視界の端で、血の色が広がっていく。

アームを動かす。だがわずかな遅れが、致命傷になる世界だ。

「クリップもう一本!」

俺の声が震える。

器械出しが差し出した金属が、光を反射してまぶしい。

「……見えた!」

深く潜り込むように操作する。

わずかな圧で、出血点を探る。

アームの先が震えた瞬間、視界に赤が走る。

「血圧下がってる!」

里奈の声。

心拍の音が速くなる。

俺の額を汗が伝い、フェイスシールドの中が曇る。

美玖、このまま君を失うのか——。

「悠真くん!」

里奈の叫びが飛ぶ。

歯を食いしばり、もう一つの出血点を探る。

頼む、ここで止まってくれ……!

次の瞬間、金属の感触。

「止まった!」

里奈の安堵の声。

だが俺はまだ、息をしていなかった。

自分の心臓の音だけが、静かなオペ室に鳴り響いていた。
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