白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
静寂の中、アームの先端が微かに動くたび、わずかな神経の振動がモニターに波を描いた。
もう震えはなかった。
心臓の鼓動も、呼吸も、すべてがひとつのリズムに溶け込んでいく。
——ここから先は、俺の“手”が信じるままに。
ピアノを弾くように、滑らかに、確実に。
腫瘍の輪郭をなぞりながら、少しずつ分離させていく。
柔らかな組織の感触。
モニター越しでも伝わる、命の“手触り”。
「……取れた。」
ふっと、腫瘍が抵抗を失った。
その瞬間、息を詰めていた里奈さんが小さく息を吐く。
俺はそれを静かにトレーへと収めた。
美しくも、残酷なほど小さな塊。
これが、美玖を蝕んでいたもの。
「残りも慎重にいく。」
細かな残存部をひとつひとつ、丁寧に取り除いていく。
指先に集中するたび、まるで彼女の心に触れているような錯覚があった。
——美玖、君は今、どんな夢を見ている?
ゆっくりと声に出さずに問いかける。
もうすぐだ。
あと少しで、君の音が戻る。
「……もうすぐ終わるよ。がんばろうな。」
マイク越しの声が、無菌のオペ室に、祈りのように響いた。
もう震えはなかった。
心臓の鼓動も、呼吸も、すべてがひとつのリズムに溶け込んでいく。
——ここから先は、俺の“手”が信じるままに。
ピアノを弾くように、滑らかに、確実に。
腫瘍の輪郭をなぞりながら、少しずつ分離させていく。
柔らかな組織の感触。
モニター越しでも伝わる、命の“手触り”。
「……取れた。」
ふっと、腫瘍が抵抗を失った。
その瞬間、息を詰めていた里奈さんが小さく息を吐く。
俺はそれを静かにトレーへと収めた。
美しくも、残酷なほど小さな塊。
これが、美玖を蝕んでいたもの。
「残りも慎重にいく。」
細かな残存部をひとつひとつ、丁寧に取り除いていく。
指先に集中するたび、まるで彼女の心に触れているような錯覚があった。
——美玖、君は今、どんな夢を見ている?
ゆっくりと声に出さずに問いかける。
もうすぐだ。
あと少しで、君の音が戻る。
「……もうすぐ終わるよ。がんばろうな。」
マイク越しの声が、無菌のオペ室に、祈りのように響いた。