白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
でも聞かずにはいられない。

ああ、早く君の声が聞きたい。美玖。

その時、俺の背中を摩る人がいた。

「天音さんが起きるのは、明日よ。」

「分かってる。」

「それでも、彼女の顔見ずにはいられないのね。」

里奈さんは、俺の背中を抱きしめた。

「あなたが不安で押しつぶされそうな時、救えるのは私じゃなかった。」

彼女の声が震えている。

「天音さんなのね。あなたを勇気づけたのは。」

「ああ。」

彼女はグスっと鼻をすすった。

「好きだったよ、悠真君。」

それは彼女の、決心だったかもしれない。

俺は里奈さんの手を握った。

「ありがとう、里奈さん。あの夜事、忘れません。」

すると里奈さんは、ふふふと笑った。

「もう忘れて。私が惨めになるだけでしょ。」
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