白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
そして夜勤で病院に来て、数時間。

そろそろと美玖が起きる時間だと思って、ICUに行ったら、まだ彼女は起きてなかった。

「御寝坊さんなのかな。美玖は。」

だが彼女は、翌日の朝になっても目を覚まさなかった。

モニターの波形が穏やかに流れるたび、椅子に座ったまま、彼女の手を握っていた。

「……まだ眠ってる。」

黒川先生が静かに言った。

「脳圧も安定してる。心配することはない。」

心配することはない——その言葉が、逆に胸を締めつける。

命は助かった。だが、美玖の“心”はまだ戻らない。

ガラス越しに、眠る横顔を見つめる。

その指は、ピアノを弾いていた時よりも少し細く見えた。

「美玖……君の音が、聞こえない。」

呟いた声はマスクの中でかすれて、誰にも届かない。

——どうか、もう一度、音を奏でてくれ。

その願いが、祈りに変わる頃、俺の頬を一筋の涙が伝った。
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