白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私はううんと首を横に振った。

「まさか……手術のせいで?……」

お母さんの体が震えていた。

「もう、仕方ないのよ。私、ピアニスト失格になっちゃった。」

私がそう言うとお母さんは、新しい洗濯物を持って病室を出て行った。

一緒に、ピアニストになる夢をおいかけてくれたお母さん。

裏切ってごめんなさい。

手をぎゅっと握った瞬間だった。

誰かが走ってくる音がした。

病室のドアが開き、そこには息遣いの荒い悠真先生が、立っていた。

「美玖。指、動かないって本当?」

きっとお母さんが帰りがけに言ったりしたのだろう。

余計なことをしてくれたものだ。

「なんで、黙ってた!」

悠真先生は私の元に来て、真剣な瞳で見つめる。

「……私の指は、両方動くわ。悠真先生の手術は、成功した。」

「繊細な動きができなければ、ピアニストじゃないんだろ。」
< 208 / 298 >

この作品をシェア

pagetop