白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私はもう何も言えなかった。

悠真先生を責めることはできない。

彼は、全力で私を救ってくれた。

10%の壁を打ち破って、こうして私の指は動いている。

ただ、ピアニストが持つ繊細な動きが、できないだけで。

私は、声を出さずに静かに泣いた。

「ああ、美玖。」

悠真先生が床に両膝を着く。

「俺は……君の人生を奪ってしまった。」

「ううん。悠真先生は命を救ってくれたわ。それで十分よ。」

でも彼は頭を抱え込んでしまった。

今の彼の頭の中には、重篤な自責の念があるだろう。

なぜ、私の手術は上手くいかなかったのだろうと。

酷ければ、手術は失敗したのだと思うかもしれない。

「悠真先生、あなたのせいじゃないのよ。」

「じぁあ、誰のせいでこうなった!」
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