白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私はそっと、悠真先生の背中を摩った。

「ねえ、悠真先生。ピアニストとしては死んだけど、まだ他の生き方があるわ。」

悠真先生は顔を上げた。

「ピアノの先生とか、そんな感じ?」

「美玖……」

なんでだろう。

ついさっきまで、ピアニストじゃない私は、私じゃないとまで思っていたのに。

悠真先生を見たら、別の人生があると思えてきた。

「人生って、何度でもやり直せるのね。」

「うん。」

「悠真先生が、そう教えてくれた。」

そう言うと彼は、私を両腕でぎゅっと抱きしめてくれた。

「美玖の新しい人生の中に、俺はいる?」

「えっ……ああ、どうかな。」

悠真先生は泣きながら笑った。

「入れてくれないと、怒るぞ。」

悠真先生はいつだって、私に笑顔をくれる。
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