白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―

第8章 Andante sostenuto ― 沈黙の告白

俺はロッカー室の中に入り、自分のロッカーを開けた。

中にはショパンのCDが入っている。

彼女、復帰コンサートに俺を呼んでくれると言ってくれたのに。

医療用のシャツを脱ぐと、途端に医師としての自分が崩れた。

立っているのが、やっとだ。

自分の私服に着替え、ロッカーのドアを閉めると、そこに自分の頭を打ち付けた。

バアアンという音がする。

頭が痛い。でも美玖の痛みは、こんなもんじゃない。

俺は手に持っていた医療用のシャツを、思い切り床に叩きつけた。

「大丈夫ですか?」

ロッカー室にやってきた篠田先生が、投げ捨てた医療用のシャツを拾ってくれた。

「どうしたんですか。」

俺は黙って、篠田先生の前に立ちつくた。

「まあ、渡部先生だから。どうせ天音さんのことでしょ。」
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