白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
お母さんにそう言われ、窓の外を見ると一台の車が、家の前に停まった。

待って、今はまだ昼間だよ?

悠真先生が、車で来ていい時間帯じゃない。

「ほら。言っておいで。」

でも私はうずくまって、両膝を抱えた。

「美玖?」

震える声でお母さんに伝えた。

「まだ、言えないよ。言ったら、終わっちゃうから。」

私がそう言うと、お母さんは玄関に向かった。

ああ、悠真先生。

私が別れたいとか言い出したら、きっとあなたはそれを受け入れてしまう。

そして私は心が空っぽになるの。

悠真先生のいない人生を、どう生きていけばいいのか分からなくて。

その時だった。

コンコンと庭の窓を叩く人がいた。

見ると庭に、悠真先生の姿があった。
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