白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
そして悠真先生は、そっと私の肩を掴んだ。

「別れるなんて言うなよ。美玖、別れるな。」

私の頬に涙が伝う。

「俺と美玖は、二人で一つだ。」

「悠真先生!」

私は先生の体をぎゅっと抱きしめた。

初めてだった。自分から悠真先生を抱きしめたのは。

そしてそんな私の耳に、悠真先生は囁いた。

「これからの時間、俺と過ごさない?」

「うん。」

私は悠真先生から離れると、ちょっと待っててと言って、荷物を取りに行った。

玄関を出ようとする私に、お母さんはワクワクしている。

「あら、仲直りしたの?」

「ん?うん。」

別れるとか言ったのに、調子よかったかな。

「デート、楽しんでらっしゃい。」

私は笑顔でお母さんを見つめた。

「行ってきます。」

玄関のドアを開けると、悠真先生が出迎えてくれた。
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