白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
その言葉に、胸がズキッと痛んだ。

他意はない。そうなのだ。彼はただ医師としての責務を果たしているだけ。

「顔がいいだけに、女性は自分が特別だと勘違いするんですよね。」

その言い方に、ちょっと棘があるように聞こえた。

「分かっています。あの先生、そう見えて実は淡々としていますから。」

「そうですか。なら、心配しないで大丈夫ですね。」

そう言って看護師さんは、行ってしまった。

一人、ため息をつく。

恋愛なんてするもんじゃない。

心をかき乱されて、挙句に傷ついて。

誤解と嫉妬に、心が荒んでいく。

だから私は、ピアニストになる事だけを考えてきた。

周りの女の子が、恋愛に現をぬかしている間、たった一つ。ピアノだけに。


そして、外の景色を見た時、病室のドアが開いた。

「失礼するよ。」

その声でドキッとした。

「渡部先生……回診ですか?」

少しだけ、声が震えるのを感じた。
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