白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「でも、よく院長が許可しましたね。」

すると黒川先生が、うんと頷いた。

「院長も、自分の病院で手術したピアニストが、復帰コンサート開くなんて、自慢にしたいんだよ。」

「なるほど。」

人は時に、利益によって動くことがある。

だがそれが全て悪いことではない。

相手の希望になることだって、あるんだ。

「美玖ちゃん、どう?練習頑張ってる?」

「ええ。家に行けば、ずっとピアノの音が流れています。」

俺はあの、美玖のピアノの音が好きだ。

誰よりも柔らかくて、優しい音色がいつも俺を包み込んでくれる。

それは俺が感じる、ピアニスト天音美玖の、真骨頂と言ってもいいだろう。

「はあ。やっと美玖ちゃん。動き出せるんだな。」

「はい。」

俺は自分の事のように、嬉しかった。
< 285 / 298 >

この作品をシェア

pagetop