白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
私は一礼をして、客席を見つめた。

中にはコンクールの時から、私を追いかけてくれているファンもいた。

胸がいっぱいになる。

そして私は椅子に座ると、鍵盤の上に指を置いた。

デビュー一曲目は「ショパン:ノクターン第20番 嬰ハ短調(遺作)」

静かに始まった音は、まるで私のピアノ人生を表しているようだった。

私の最初も、従姉妹のお姉さんに習った静かな音楽から始まった。

続いて弾いたのは「リスト:ラ・カンパネラ(La Campanella)」

神の鐘が鳴るような、狂気と技巧の輝きに、私のコンクール時代を思わせる。

学生時代の私は、誰にも負けないくらい輝いていた。

出たコンクールでは、軒並み賞を取っていた。

それを表すかのような音楽。

そして、それが終わった後、私のデビュー。

運命が交差する曲 「ショパン:バラード第4番 ヘ短調 Op.52」
< 3 / 298 >

この作品をシェア

pagetop