白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
流れるように弾いていた中盤だった。

頭が痛い。

緊張で頭が締め付けられる。

でも、弾かなきゃ。これは私の人生の始まりなのだから。

「ううっ……」

頭がズキッとする。どうして?今までこんな事なかったのに。

あまりにも痛くて、思わず左手で頭を押さえる。

なんとか右手で弾き続けるも、頭の痛みは強くなるばかりだ。

もう少し、もう少しでこの曲が終わる。

その時だった。

ズキーンと言う音と共に、私は椅子から転げ落ちてしまった。

「美玖さん!」

遠藤さんが私に駆け寄る。

「うう……ううううう!」

痛くて体が勝手に動く。

会場がざわつく。

「どうした?頭か。頭が痛いのか!」

「うう……うわあああ!」

あまりの痛さに、叫んでしまった。

「救急車だ!救急車を呼べ!」

遠藤さんが私を抱きかかえるも、痛みで体が動く。

「しっかりするんだ!今、病院に連れて行くから!」
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