白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「せーんせ。」

あの、俺の名前を呼びながら泣いていたという患者だ。

「三島さん。最近、どうですか?気分は落ち着いてますか?」

「はい。でも先生を見ると、心臓がドキドキしてきちゃった。」

三島さんは、そう言って髪を掻き上げた。

その瞬間、彼女の瞳が揺れた気がした。

「三島さん。」

「きゃっ。」

俺は彼女の肩を掴むと、じーっとその瞳を見つめる。

やっぱり少し揺れている。

脳に何か障害が起こってるのか。

「他に何か症状はありませんか?」

「ええ?ああ、指が震えて……」

「指が?ちょっと失礼。」

俺は彼女の両手を握った。

「ぎゃああ!」

「どうしました?」

「先生が……私の手を……」

だが俺はその時、彼女の指がわずかに震えているのを感じた。

俺は彼女を抱きかかえた。

「先生!」

「三島さん、落ち着きましょう。誰か!ストレッチャー持って来て!」

俺の呼びかけに看護師がストレッチャーを持ってくる。
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