白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
遠藤さんの機転で、私はそのまま救急車に乗った。

「うう……はぁぁぁ……」

吐き気がする。世界が回って見える。

「吐き気あり!他に何か症状は?」

救急救命士の人が聞いてくるけれど、何も答えられない。

「気持ち悪い……げほっげほっ……」

口から唾が出る。涙が止まらない。

どうして?なんで?幾多のコンクールを乗り切ってきた私なのに!

プロデビューの日に、こんな症状が出るなんて!

「美玖さんっ!」

遠藤さんが手を握ってくれる。

「ごめんなさい……私……」

「気にしなくていい!今はとにかく落ち着くんだ。」

遠藤さんは優しい。デビューコンサートを台無しにしたのに。

「着きました!」

救急車の扉が開いて、私は担架事外に引き出される。

「もう大丈夫ですよ。病院に着きましたからね。」

看護師の声がする。

長い廊下を経て、私は頭部CTを撮影された。

涙が出てくる。私の頭はどうにかなってしまったのだろうか。
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