白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「そんなことないです。」

「あるよ。もう1時間も練習してる。」

時計を見ると、もう18時を過ぎていた。

「今日はこれくらいにしよう。」

黒川先生が俺の肩を叩いた。

コンソールから離れると、呆然とした。

「ロボティクアーム使うのは初めてじゃないのに、緊張してるんですかね。」

「そんな時もある。だからこそのシミュレーションだよ。」

黒川先生は、俺がこの病院に来てからいつもお世話になっている上司だ。

俺に脳外科医として、大切な事を教えてくれる。

「また来ます。」

そう言うと黒川先生は、俺の背中を摩った。

「どうしたんだ。思い詰めるのはよくないぞ。」

自分を追いつめている。そうなんだろうか。

「救いたい、人生があるんです。」

すると黒川先生は、俺を見つめた。

「医師として必要な考えだが、情に流されてはいけない。」

「情ですか。」
< 46 / 298 >

この作品をシェア

pagetop