白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
それにしても、車を運転している里奈先生は、どことなく大人の女性に見えた。

しばらく車で走ると、里奈先生のマンションがあった。

「散らかっているけれど、遠慮しないで。」

「はい。」

そう言われたが、里奈先生の家は雑貨が多くて、人の気配が感じられた。

俺の部屋とは、全く逆だった。

「今、夕食作るから待ってて。悠真君。」

君付けで呼ばれるのが、こんなに居心地いいとは思わなかった。

「手伝いますよ。」

「疲れているでしょうに。」

「今日はそれほどでも。」

里奈先生の作った料理は、回鍋肉だった。

キャベツとバラ肉のハーモニーが、絶妙だった。

「いつも料理してるんですか?」

「はは。普段はしないわ。休日だけよ。」

という事は、今夜は特別に作ってくれたんだろうか。

なんだか、胸がくすぐったい。

「ビール飲む?ああ、ワインもあるわよ。」
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