白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
俺は電話を切ると、寝室に行って脱いだ服を着た。

「悪い。頭部外傷の患者だ。」

「私が車で送るわ。」

もう既に服を着て、車のキーを持っていた里奈。

急いで玄関を二人で出て、車に乗り込んだ。

「今の時間、道路は空いてるから10分ぐらいで着くわ。」

「悪い。」

俺がシートベルトをすると、里奈は車を急発進させた。

「お酒、飲まなくて正解ね。」

「ああ。」

俺は里奈をチラッと見た。

「ごめん。ゆっくりできなくて。」

「謝らないで。分かってるから。」

車は意外とスピードを出して走っていた。

「焦らなくていいから。」

「でも、1分でも早く病院に着いた方がいいでしょう?」

里奈は俺を見る事なく、運転に集中していた。

おかげで思ったよりも、早く病院に到着した。

ロッカー室で急いで着替える。

そして1階の奥に急いで走った。

救急に入ると、宿直の先生が手術中だった。


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