白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
俺は低く言った。

「焦らない。俺の手の動きだけを見ていて。」

骨ドリルの音が響く。

白い骨の下に、暗赤色の鼓動が見えた。

「あと、吸引の補助できる?」

「はい。」

研修医に、吸引管で出血を除去して視野を保ってもらえるだけで、手術は楽だった。

「血種摘出。バイポーラ(電気凝固)で出血点、止めます。」

時間がどれくらいかかっているかが分からない。

それも救急ならではだった。

「縫合します。プレート。」

「はい。」

俺は骨を戻すと、プレートで固定し、頭皮の縫合に入った。

「完了。バイタル安定してますか?」

「はい。安定しています。」

看護師が告げた。

「よかった。」

周りを見ると、もう朝方だった。

窓の外を見ると、空が白く染まっていた。

「さすがですね。渡部先生。」

宿直の先生が他のオペを終えて、やってきた。

「もっと時間、かかると思っていました。」



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