白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―
「いえ、脳外科医なんで。こういうのは慣れています。」

「そうですか。よかったら、宿直室で寝ますか?」

「はい。そうさせて頂きます。」

俺はガウンを脱ぐと、救急室を出た。

薄暗い長椅子に、里奈が寝ていた。

俺は彼女の元に行き、その頬に触れた。

「んん……」

目を覚ます里奈が、不憫に思えた。

本当だったら、里奈の寝室のベッドでおはようと言って、目を覚ますのに。

「終わった?」

「うん。」

里奈は起き上がると、目を擦りながら言った。

「帰ろう、一緒に。」

甘えた声。俺は里奈に頭を下げた。

「ごめん。宿直室で寝てそのまま仕事する。」

里奈は泣きそうな顔をしていた。

「なんで、謝るの?」

「里奈の傍にいてやれないから。」

そうだ。俺は里奈をこのままにしておけない。

「鷲尾先生、俺はあなたを幸せにできません。」

彼女から涙が零れた。
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