白衣の下に潜む静かな溺愛 ―命を救う手と音を奏でる指先のあいだで―

第3章 Moderato ―理性と情熱のあいだで

手術は受けなければ、私は死ぬ。

その事が、私の心に重くのしかかっていた。

でも、この指を失いたくない。

何故か、浮かぶのは鍵盤ではなく、渡部先生の顔だった。

会いたい。今、彼に会いたい。

そして看護師さんが、私に一枚の紙を持って来た。

「天音さん。今日MRIの検査、入っています。」

「また撮るの?」

私は起き上がって、スリッパを履いた。

「今日は体調がいいから、一人で行きます。」

「分かりました。」

妙に聞き分けのいい看護師に、気持ちが悪い。

「渡部先生は?」

不意に聞くと、看護師さんはチラッと私を見た。

「天音さんも、渡部先生の事気にするようになりましたか。」

「いや、そんなんじゃなくて。」

天音さんもってことは、他の患者さんも、そういう事を聞くのね。

「渡部先生は、今日回診に来れないかも。」

「えっ?どうしてですか?」
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